アリドオシラン(蟻通し蘭、学名:Myrmechis japonica (Rchb.f.) Rolfe)は、ラン科アリドオシラン属に分類される多年草の1種。和名は葉がアカネ科のアリドオシに似ていることに由来する。属名の「Myrmechis」は、アリを意味し、種小名の「japonica」はギリシア語で日本を意味する。
分布と生育環境
千島列島南部、北海道、近畿地方以北の本州、四国に分布する。
深山(山地帯から亜高山帯にかけて)針葉樹林や落葉樹林の下で苔に混じって、湿った場所に生育する。基準標本は御嶽山の個体。
特徴
茎は細くひも状で下部は地を這い、高さ5-10 cm、無毛。根を出すことは稀。3-5枚の葉がまばらに互生し、広卵形で長さ5-12 mm、幅4-8 mm、表面に微突起と光沢があり、冬に枯れる。花茎には白い多細胞の縮毛がある。茎の先端に1-3個の白色ときに薄桃色の花を横向きにつける。花期は7-8月。苞は膜質で、長さ4-6 mmの広披針形。唇弁は長さ6-7 mmの萼より長く、約1 cmで基部はふくれ、先端は2裂する。葯は広卵形で、薄紅色。草姿はアカネ科のツルアリドオシに似ている。
種の保全状況評価
日本では以下の多数の都道府県で、レッドリストの指定を受けている。採集、登山者による踏みつけ、森林開発などにより、個体数が減少している地域がある。磐梯朝日国立公園、日光国立公園、上信越高原国立公園、中部山岳国立公園、僧ヶ岳県立自然公園などの自然公園指定植物。
- 絶滅危惧IA類(CR)- 神奈川県、山梨県、徳島県、高知県
- 絶滅危惧IB類(EN)- 愛媛県
- 絶滅危惧II類(VU)- 埼玉県、東京都西多摩、新潟県、富山県
- Bランク - 岩手県
- 絶滅危惧種 - 奈良県
- 準絶滅危惧(NT)- 秋田県
- 希少種(R) - 北海道
- 要注目種 - 静岡県
脚注
注釈
出典
参考文献
- 今井建樹『信州高山高原の花』信濃毎日新聞社、1992年6月30日。ISBN 4784092153。
- 大場達之、高橋秀男『日本アルプス植物図鑑』八坂書房、1999年4月25日。ISBN 4896944305。
- 小野幹雄、林弥栄(監修) 編『原色高山植物大図鑑』北隆館、1987年3月30日。ISBN 4832600079。
- 豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月。ISBN 4-635-09019-1。
- 佐竹義輔、大井次三郎、北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本Ⅰ単子葉類』平凡社、1982年1月10日。ISBN 4582535011。
- 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421。
- 牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑』北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZE。 NCID BN00811290。全国書誌番号:85032603。https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001728467。
外部リンク
- アリドオシランの標本(新潟県浅草岳で1971年7月27日に採集) (千葉大学附属図書館)
- Myrmechis japonica (The Plant List)(英語)



